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世界の食糧危機とフードデザートを解決する、モジュール式垂直農園

FOOD | 2022.03.08

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世界の食糧危機とフードデザートを解決する、モジュール式垂直農園

都市部にある食糧危機「フードデザート」問題

世界では9人に1人は飢餓状態にあり、3人に1人は何らかの栄養失調に苦しんでいるという。

こういった問題を耳にしたことはあっても、日本に住んでいるとイメージしづらいかもしれない。しかし今、都市部でこそ起こる食糧危機が問題になりつつある。それが、「フードデザート(食料品砂漠)」だ。

これは都市部の貧困層が多い地域に見られる現象で、大型スーパーや生鮮食品店が近くになく手頃な価格で栄養価の高い食品を入手することが困難な状態を指す。日本も無関係ではなく、大都市圏などへの人口集中により商店街がシャッター通りになってしまった地方都市や、高齢化団地などを中心にすでに発生している問題である。

そんな中、これらの問題を解決できるかもしれない「農園」が開発されたという。
一体どのようなものなのだろう。

木を模したモジュール式垂直農園「Glasir」

こちらは米ニューヨーク州ブルックリンの街の画像だが、どこに「農園」があるか分かるだろうか?

正解は、ビルの前に植えられた1本の木だ。

開発したのはノルウェーとアメリカに拠点を持つFramlab社で、これは「Glasir」という名のモジュール式垂直農園である。

「垂直型」の名の通り、通常の農園のように広い面積は必要なく、普通の木1本を植えられるスペースさえあれば、歩道・公園・庭などどこにでも建てられる設計になっている。
さらに、モジュール式なのでその土地の気候や条件に合わせて拡張、再構成、移動によって最適な構造にすることが可能なため、1つのユニットでは年間480ポンド(約217kg)、ユニットを繋げてツリー構造にすると年間48,000ポンド(約21トン)もの野菜を栽培できるのだそうだ。

「Glasir」で新鮮な野菜をサステナブルに育てる

この「Glasir」は、ただ狭い都市部でも野菜を栽培できるというだけではない。

必要なエネルギーは全て太陽光から、水は雨水から供給されるため、自立したサステナブルな野菜栽培が可能な点も優れている。また、GlasirにはAIと環境センサーが搭載されており、気温や風などの環境条件を測定することで野菜の成長を最適化することが可能なのだという。
さらに、外塗に使われている酸化チタンが空気中の汚染物質を抽出することで、周辺の空気まで浄化するというのだから驚きだ。

未来の農業のかたち

Glasirは、モジュール式の柔軟性とサステナブルな栽培方法を持つ垂直農園であり、地域住民に年間を通じて手頃な価格で地元の農産物を提供できる素晴らしいシステムである。

日本でも今後ますます都市一極化や高齢化が進むにつれ、フードデザートはより大きな課題となるだろう。
Glasirのように手軽で場所を選ばず建てることができるサステナブルな農園を街で見かける日はそう遠くないかもしれない。


Source :This modular vertical farm could sweep away ‘urban food deserts’

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TEXT:
倉若太一 ( Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。企業・利益中心の開発はいかがなものかと疑問を持ち始めました。いつまでもあると思うな親・金・資源。

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