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「ゴースト」から海洋生物を守る、ボランティアダイバー

SOCIAL | 2022.06.15

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「ゴースト」から海洋生物を守る、ボランティアダイバー

私たちは海をはじめとする自然から多くの恩恵を受けている一方で、さまざまな経済活動や日常生活を通じその自然を破壊してしまっている。

例えば、海なくして私たちの生活は成り立たないと言っても過言ではないが、廃プラや有害物質の海洋流出によって、多くの海洋生物が破壊されたり絶滅の危機に晒されていることもそうだ。

今回は、そんなゴミで溢れる海から大量の「ゴースト(幽霊)」を撤去する取組みについて紹介しよう。

海洋生物を苦しめる「ゴーストネット」

「ゴースト」とは、海に廃棄された「漁具(特に漁網)」のことだ。
漁具の紛失や廃棄には、悪天候、水面下の引っ掛かり、他の漁具との接触などさまざまな理由があるが、故意に捨てられることもある。漁船から投棄された漁網は文字通り、ゴースト(幽霊)のように海中を漂い、魚などの海洋生物を絡め続けるため「ゴーストネット」と呼ばれている。

昔の漁網は麻などの天然素材で作られていたが、プラスチックで作られるようになって以来、ゴーストネットが問題視されるようになった。プラスチック製の漁網は浮力や耐久性があるため半永久的に海に残り、絡まってしまった生物にとっては、より脱出を困難にする要因になっているのだという。

一度絡まると、生物は締め付けられ、動けなくなり、もがき苦しみながら溺れ、やがては窒息死、餓死、溺死に至ってしまう。さらに、絡めとったさまざまな海洋生物やゴミと共に沈んだゴーストネットが、海底を引きずり回ることで海底環境にも深刻なダメージを与えるという。
この「ゴーストネット」は生態系を破壊するひとつの大きな要因となっているのだ。

世界中の海で投棄されている漁具は毎年64万トンにものぼると推測されており、これまでに確認されただけでも、クジラ、海鳥、ウミガメ、アザラシ、イルカ、珊瑚など、300種類以上の種がその影響を受け、被害の数は3万件を超えているという。

海洋生物を救う、Ghost Divingの活動

ギリシャのイタキ島では、10年前に放置された2つの養殖場の残骸と投棄された漁網が、今でも海洋生物を苦しめているという。

それを救うために立ち上がったのはGhost Diving。
Ghost Divingは2012年に設立されたNGO団体で、投棄された漁具やその他の海洋ゴミの撤去を専門に行うテクニカルダイバーによって運営される、世界最大の国際的ダイビング組織だ。

イタキ島にはヨーロッパ各国から12名のボランティアダイバーが集まり、ゴーストネットを撤去するために活動しているそうだ。
「このプロジェクトの課題は、漁網の重さと量です。漁網はとても大きく、危険な作業です。漁網を海底から持ち上げているときに、突然の波に襲われた場合を想像してください。引き上げるには、技術とチームワークが非常に重要です」と、Ghost Divingの創設者パスカル・ヴァン・エルプ氏は述べる。

重要なのは、全ての人が認識を高めること

こうして引き上げられた網は、提携業者によってリサイクルされ、靴下や水着、カーペットなど持続可能な新しい製品に生まれ変わるのだという。危険で地道な仕事だが、昨年は76トンものゴーストネットをはじめとする海洋ゴミを取り除いたそうだ。

Ghost Divingの目標は、ゴーストネットを物理的に撤去することだけではない。
ゴーストネットが引き起こすさまざまな危険について、すべての人に知ってもらうことを目標にしている。まずは人々にこの問題に関する認識を高めてもらうことが、ゴーストネットを減らすことに繋がると考えているのだ。そのため、問題を可視化することにこそ力があると考え、プロの水中カメラマンとも協力して彼らの活動を記録し役立てているという。

海からの恩恵には、恩で返したいものだ。


Source :Volunteer divers clear tons of dangerous ‘ghost nets’ from the Greek coastline

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TEXT:
倉若太一 ( Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。企業・利益中心の開発はいかがなものかと疑問を持ち始めました。いつまでもあると思うな親・金・資源。

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