PLUGO JOURNAL

NEWS

ニーズに合わせて変化可能、海面上昇から人々を救う水上都市

ARCHITECTURE | 2022.06.27

SHARE

ニーズに合わせて変化可能、海面上昇から人々を救う水上都市

海面上昇により、危機に瀕している沿岸地域

気候変動と海面上昇により、世界中の沿岸地域が危機に瀕している。

国連によると世界人口の約40%は海岸から100km未満の場所に住んでおり、洪水により何百万人もの人々が故郷を追われると同時に、都市部の人口が急増し住宅コストの高騰にも繋がっている。日本においても人口の約30%が2100年までに住む場所を失う可能性があると言われており、それはそう遠い未来の話ではない。

そんな中、国連ハビタット(UN-Habitat)は「海面上昇に強い水上都市」の建設に注目しているという。

気候変動に対応する水上都市

そのプロトタイプを設計したのは、ニューヨークに拠点を置く海洋テック企業Oceanix社。
同社は国連ハビタットの協力のもと、韓国・釜山に「持続可能な水上都市:OCEANIX釜山」を建設する準備を進めている。

柔軟性、適応性の高いモジュール都市

この水上都市のベースになるのは、広さが4.5エーカー(約18,000㎡)の六角形の浮遊式プラットフォームで、最大300人の居住が想定されている。このプラットフォームはモジュール式になっており、つなぎ合わせることでさらに大きなコミュニティを形成することができる。

各プラットフォームは、コミュニティのニーズや配置場所次第で柔軟にデザインされる。例えば、波の衝撃を抑制する防波堤として機能するものや、水耕栽培専用として利用されるものもあるだろう。

また、陸上では学校や病院、住宅などは一度建てるとその配置が固定されてしまうが、水上都市は最初に決めた配置でうまく機能しなかった場合、プラグを抜いて配置を変えるだけで、街を再構成できるという柔軟性も持っている。
さらに言えば、都市を置いた位置が最適な場所ではないと判断した場合、都市全体のプラグを抜いて別の場所に移動させることも可能である。

自然と調和する、サステナブルな仕組み

この都市では太陽、風、海、波から生成されたエネルギーだけを利用し、淡水は、海水の淡水化や雨水を濾過して作る。
また、それぞれのプラットフォームを海底に固定するアンカーの素材には、環境に優しい「バイオロック」を使用。バイオロックはコンクリートよりも堅く、海中にあるミネラル分を使って成長するため、時間の経過とともに固定強度を高められるのだそうだ。さらにこのアンカーは人工岩礁のもとにもなるため、水上都市周辺の生態系を回復させる可能性もあるという。

「この水上都市では自然と調和した生活を送ることができます。水面下にあるものを破壊する必要はなく、私たちは水上に住み、水面下の生態系も守ることができるのです」と、Oceanix社の共同設立者Itai Madamombe氏は述べる。

持続可能な水上都市を目指して

他にも、同社はCentre for Zero Waste社と協力し、市内で出る廃棄物を再利用できる仕組みも構築。さらに、公共交通機関として革新的な移動モビリティを導入し、車のない都市を目指すという。

「水上都市のインフラ開発で難しいのは、エネルギー、水、食料生産、廃棄物、モビリティ、沿岸生息地の再生という6つのシステムすべてを市内で完結させ、かつ効率的に機能するよう統合することです。これは新しい挑戦です」と、Madamombe氏は述べている。

Oceanix社の目標は、まずは1万人規模の水上都市を作り、すべての人々に手頃な価格で住宅を提供することだ。来年にはOCEANIX釜山の建設を開始し、2028年初めには最初の住民が居住できることを目指している。


Source :Can floating cities help coastal communities threatened by rising sea levels?

SHARE

TEXT:
倉若太一 ( Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。企業・利益中心の開発はいかがなものかと疑問を持ち始めました。いつまでもあると思うな親・金・資源。

COPYRIGHT PLUGO ALL RIGHTS RESERVED.