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20世紀初頭の「自動車黎明期」になぜ電気自動車が覇権を獲れなかったか?

EV | 2022.06.22

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20世紀初頭の「自動車黎明期」になぜ電気自動車が覇権を獲れなかったか?

過去の記事でも紹介したが、世界で初めての自動車は電気自動車だった。

ガソリン車より10年も早い1832年に開発されており、1899年には当時の「世界最速」を電気自動車が記録。その頃にはアメリカの街中を電気自動車のタクシーが走っていたという記録も残っている。
ちなみに、アメリカの記録に残っている最古の自動車による死亡事故は1899年9月14日、ヘンリー・H・ブリス氏が電気自動車のタクシーに轢かれたことが原因だった。

それほどまでに広く(といっても自動車自体が珍しい時代ではあったが)普及した電気自動車がガソリン車に取って代わられたのはなぜか。

一般的には、現在でも名車として名高い「フォード・モデルT」がライン式生産方式を採用したことによって低価格で入手できたためだという説がよく語られるが、スウェーデンのルンド大学の研究チームは別の見解を示している。

電力網の整備があと15〜20年早ければ…

それは「電力網の整備があと15〜20年早ければ、多くの自動車メーカーがガソリン車ではなく電気自動車を生産していたはず」という研究結果である。

研究チームは、アメリカにおける3万6000もの乗用車モデルをデータベース化し、その販売戦略を分析、その結果として得られたのが上記の結論だという。

当時のアメリカでは家庭向けの電力事業は利益が薄く、大都市を除いて全国にはまだ普及していなかったため電気自動車への投資が敬遠され、結果としてガソリン車が覇権を握ったというのだ。

ちなみに、アメリカ全土の電力網整備は1930年代のフランクリン・ルーズベルトによるニューディール政策まで待たなくてはならない。
これがあと15〜20年早く行われ、全国に電力網が行き渡っていれば最初から自動車の動力として電気が採用され、ガソリンスタンドの代わりに充電器が配備されていたはずだという。

電力網が普及している現在では

「歴史にifはない」とはよく言われるが、この説に違和感を覚える方は多いだろう。電力網が行き渡った現在でも電気自動車が「広く普及している」とは言い難いのだから当然だ。

それは、ルンド大学の研究で前提となっている「電力網が整備されていなかった20世紀初頭のアメリカ」と現在とでは都市環境が異なっているので当然とも言える。充電器を設置するスペースにも困るような都市環境を想定していないのだ。

その状況を打破するため、アメリカのバイデン政権は2022年6月9日付けで電気自動車の充電ネットワークを全米に構築するために用意された50億ドル(約7,568億円)もの補助金の利用について、基準と規制の草案を発表した。

日本でも電気自動車の充電インフラ拡充が急がれるが、この100年余りで普及しきったガソリン車と電気自動車を入れ替えるにはさらなる努力が求められるだろう。


SOURCE  : Lack of power grids sealed fate for early electric cars

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TEXT:
塚岡雄太 ( Twitter / Instagram / Website )

PLUGO JOURNAL編集デスク。趣味はサイクリングと読書で、どこにでも自転車で現れるのでよく人を驚かせる。デジタルガジェットが好きで、IoTを活用したサステナブルな活動に興味を持っている。

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