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二酸化炭素を吸収し、光合成のサイクルを生み出すエプロン

世界の二酸化炭素排出量の10%を占めるファッション業界

ファッション業界は世界の二酸化炭素排出量の10%を占めており、地球温暖化の影響拡大や消費者意識の高まりに伴い、その膨大な排出量に対処するよう、ますます強く求められている。

多くの企業が改善に取り組む中、香港の研究所が面白いものを作り出した。なんでもこれを着用することで、同時に外食産業も環境問題に取り組むことができるという。

空気中の二酸化炭素を吸収するコットンエプロン

スウェーデン・ストックホルムのとあるレストランで、スタッフが試験的に着用しているこの「エプロン」。
一見シンプルなごく普通のものだが、なんと空気中の二酸化炭素を吸収するエプロンなのだという。

これには、アパレル大手H&Mが設立した非営利団体「H&M基金」と、香港繊維・アパレル研究所(HKRITA)が開発した技術が使われている。

布や糸に使用する綿を処理する際に、二酸化炭素吸収液(アミン含有溶液)を使用することで、綿繊維の生地が二酸化炭素を引き寄せ、吸収。そして安定させ、繊維の表面に蓄えることができるのだという。

研究チームは、石炭火力発電所の煙突に使用されている、二酸化炭素の排出を抑える技術にヒントを得たそうだ。
「多くの発電所では、排ガスを放出する前にできるだけ多くの二酸化炭素を除去しなければなりません。私たちは、その化学プロセスを綿繊維で再現できないかと考えたのです」と、HKRITAのCEOであるEdwin Keh氏は述べている。

エプロンが生み出す光合成のサイクル

さらにこのエプロンがすごいのは、二酸化炭素を吸収するだけでは終わらないという点。
使用後に室温で30~40度に温めると、なんと吸収した二酸化炭素が生地から離れ、光合成を行う植物に自然に取り込まれるというのだ。

このエプロンを試験的に着用しているストックホルムのレストランでは、水耕栽培で野菜を育てているため、その温室に使用後のエプロンを置くことで、吸収した二酸化炭素を野菜の「餌」にすることができるという。
「植物の餌として利用されることで光合成のサイクルが完成し、再び植物の栄養となることができるのです」と、Keh氏は言う。

H&M財団は、この技術革新が世界の二酸化炭素排出量削減のゲームチェンジャーとなる可能性があると主張している。

二酸化炭素吸収繊維の実用化へ

ここで気になるのは、果たしてどのくらいの二酸化炭素を吸収できるのか、ということ。
エプロン1枚で、木が1日に吸収する量の約3分の1を吸収できるそうで、「吸収力はそれほど高くありませんが、安価で簡単に製造できるので、さまざまな用途に使えると思います」と、Keh氏は説明している。

二酸化炭素吸収繊維の開発プロジェクトはまだ初期段階にあり、アパレル・ファッション業界の環境負荷低減に貢献する可能性はまだ定かではないが、HKRITAでは今後、この技術をさらに発展させ、他の用途や、吸収した二酸化炭素の利用・処分方法を探っていくという。

カーテンやテーブルクロス、カラトリーや家具など、使用アイテムやシーンも広がりそうで、実用化が待たれる。
雨だれが石をも穿つ日は、そう遠くないのかもしれない。


Source :These aprons can absorb CO2 just by people wearing them

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TEXT:
倉若太一 ( Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。企業・利益中心の開発はいかがなものかと疑問を持ち始めました。いつまでもあると思うな親・金・資源。

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