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使い古され、捨てられるはずの「電線」から生まれた服

FASHION | 2022.03.31

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使い古され、捨てられるはずの「電線」から生まれた服

ファッション業界のもつ社会問題

当メディアの読者は、ファッション業界がいかに環境に影響を及ぼしているかご存知だろう。

化学繊維から作られる服は、その素材調達から流通までの様々な過程で環境を汚染している。
また、安価に抑えるための大量生産によって、大量の服が廃棄されている。
さらに、生産コスト削減のための劣悪な労働環境。

こうした社会問題の解決に業界全体で取り組んでいるが、イギリス在住のファッションデザイナーAlexandra Sipa氏もその一人。
彼女はなんと、使い古された「廃棄電線」を利用して洋服やアクセサリーを制作しているのだ。

使い古された「廃棄電線」から生まれた服

Alexandra Sipa氏は、祖母があるものを何でも使ってアート作品を作ったり、家を飾りつけたりするのを見て、廃棄物から作品を生み出すことに興味を持っていた。
そして、ロンドンの名門芸術大学Central Saint Martinsに在学中、携帯電話の充電器が壊れ、中にカラフルな電線があることに気づいたのをきっかけに、廃棄電線から服を作るプロジェクトを始めたのだという。

当時23歳だった彼女は、リサイクルセンターと祖父の建設現場から廃棄電線を調達。生まれ育ったルーマニアの伝統的な技術も取り入れ、ハンドメイドで革新的なワイヤーレースを作り上げたのだ。
この画像のアクセサリーやドレスが、廃棄電線から生まれたものだと分かるだろうか?

昨年の秋冬コレクションは「Soul Floral」がテーマ。ルーマニアの厳格さと極端な女性らしさとのコントラストをコンセプトにしたドレスやジャケットが展開された。

「ファッションは私の大好きな業界ですが、気候変動に悪い影響を与えている要因の一つでもあります。私の制作は、廃棄物から革新的な高級テキスタイルを作りたいという動機から始まりました。廃棄電線を使って、ルーマニアの伝統的な技法と西洋で人気のある技法、複数の技法を取り入れ、洋服やアクセサリーを開発したのです」と、彼女は述べている。

廃棄電線を使用することで、電子廃棄物の削減に貢献

2020年には5,000万トンに達したという程、急増している電子機器の廃棄物。
彼女は電子廃棄物を回収し使用することで、この問題に警鐘を鳴らしたいのだという。

「私の作品は、単に『きれいであるための、きれいなもの』ではありません。廃棄物の中で最も急速に増加している電子廃棄物の問題について意識を高めてほしいのです」と、彼女は述べている。

ファッションの倫理面においてもサステナビリティを高める

今のままでは2050年までに約1億5,000万トンの衣類が埋立地に送られるとも言われており、ファッション業界におけるサプライチェーンの改善は急務だが、彼女は同時に、労働者の待遇や報酬など倫理面における課題についても取り組む必要があると考えている。

「この業界でワークライフバランスの実現は難しく、毎日心身を限界まで追い込まないとクリエイターの情熱や意欲が減退する、というような考えが広まっていますが、これはサステナブルではありません」と彼女は言う。

Alexandra Sipaのワイヤーレースは、物質的にサステナブルなだけでなく低コストであるため、経済的・社会的なサステナビリティを促進し、この製品を販売することで、労働者はより大きな利益を得ることができるのだという。

彼女は自らのプロジェクトが、環境だけでなくファッション業界全体にポジティブな変化をもたらす一助となる事を願っている。


Source :Designer creates stunning dresses from discarded electrical wires

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TEXT:
倉若太一 ( Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。企業・利益中心の開発はいかがなものかと疑問を持ち始めました。いつまでもあると思うな親・金・資源。

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