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直射日光不要のソーラーパネルが、廃棄農作物に価値をもたらす

ENERGY | 2022.02.22

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直射日光不要のソーラーパネルが、廃棄農作物に価値をもたらす

安定性と効率性が課題の再生可能エネルギー

世界中で再生可能エネルギーへの移行が進められているが、依然としてエネルギー消費における化石燃料の割合は約85%と大きなシェアを占めているのが現状である。

再エネ比率の増加が喫緊の課題である中、個人レベルでも設置が可能という点で広く普及しているのが、「ゼロからのスタート。40年も前から太陽光発電だけで稼働する村」の記事でも紹介した太陽光発電だ。

しかし一方で、その発電容量が設置場所や天候に左右されることも多く「安定性」や「効率性」の面での課題も指摘されている。

そんな中、これらの課題を解決する画期的なソーラーパネルが開発されたという。

直射日光不要のソーラーパネル「AuREUS」

それはフィリピンMapua大学のCarvey Ehren Maigue氏によって開発された「AuREUS(オーレウス)」。

紫外線など不可視光(人間の目には見えない光)からも発電することができるため、なんと、ソーラーパネルなのに直射日光を必要としないのだという。もちろん、曇りや雪の日でも紫外線は降り注いでいるので、天候に左右されることなく発電することができる。

これを可能にしているのが、パネルの表面に配置された廃棄農作物由来の「発光粒子」。空気中に散乱している紫外線を吸収し発光、その光をソーラーパネルに伝えている。

パネル素材は「廃棄農作物」

人口の約4分の1が農業従事者であるフィリピンでは地球温暖化による気候変動の影響が非常に深刻で、頻発する自然災害により大量の農作物が廃棄され、多大な経済損失が生まれている。

これに着目したMaigue氏は、何度も実験を重ね地元の廃棄農作物からAuREUSに使われている発光粒子を抽出することに成功したのだという。その発光粒子をパネル表面に配置することで、オーロラの原理を利用したエネルギー変換を可能としたのだ。

AuREUSはただ再エネを安定的・効率的に生成するだけの仕組みではなく、同時に廃棄農作物を減らし農家の収益確保にも貢献する、サステナブルで画期的なアイデアと言えるだろう。

「利用できる作物はまだ限定的ですが、あらゆる生分解性の素材を活用する方法を研究しています。いずれは農業以外で発生する廃棄物も活用したいと思っています」とMaigue氏は言う。

さらに、EVや航空機への応用も

可視光線のみを吸収する従来のソーラーパネルの場合は平面設置する必要があるが、紫外線も吸収できるAuREUSは、壁や地面から紫外線の反射を受けるだけでも発電できるため、垂直方向にも設置できる。

つまり、太陽に面していない都市部の高層ビルでも、壁や歩道、他の建物から跳ね返る紫外線を吸収することで発電可能なのだ。

さらに、柔軟性・耐久性があり、半透明で様々な形状に成型できるというその特性から、乗り物や衣類に使用することもできるという。
今後は、EVや航空機、船にも使えるような曲面板の開発も検討しているそうだ。

「かつて政府や軍によってのみ使用されていたコンピューターの技術が、今ではスマートフォンに搭載され個人が使用できるようになったように、再生可能エネルギーも一般の人々が日常的に活用できるものにしたいのです。AuREUSがあれば、それが可能になると思います。そうすることで、社会全体がサステナビリティの概念を受け入れ、実現することができると考えています」と、Maigue氏は言う。


Source :Solar panels built from waste crops can make energy without direct light

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TEXT:
倉若太一 ( Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。企業・利益中心の開発はいかがなものかと疑問を持ち始めました。いつまでもあると思うな親・金・資源。

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