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AIが海に眠っている化学兵器を取り除く

TECH | 2021.12.21

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AIが海に眠っている化学兵器を取り除く

海の底に眠っている軍需品が近い将来取り除かれるかもしれない。

20世紀初頭、2つの世界大戦の後、膨大な量の軍需品が海に投棄され、今現在でも放置されていることをご存知だろうか。
かつて海は「何でも捨てられる無尽蔵の場所」と考えられていたのである。

バルト海だけでも160万トンの軍需品があると推定されており、これは例えば列車に積むと、その車両がパリからモスクワまで到達する程の量だと言われている。

1960年代から70年代にかけて環境意識が高まり、1972年のロンドン条約によって危険な海洋投棄は事実上禁止されたが、過去に投棄された軍需品が今、環境に影響を及ぼしているのだ。

これは化学兵器だけではなく、腐食したことで毒性を帯びた通常兵器や、核廃棄物等も含まれる。
主に金属でできている砲弾は数十年の間に塩水によって徐々に腐食し、有害物質が周辺海域に漏れ出て海底を汚染しているという。

また、地球温暖化による海水温の変化等も軍需品の劣化に未知の影響を及ぼしており、海洋生物への影響も深刻化している。
科学者が周辺動物の組織を採取したところ、それらが毒素に汚染されていることが判明した。過去の軍需品によって今、動物が死んだり、出生率が低下したりしていることが分かったのだ。

またロサンゼルス沖では、農薬DDTを含む大量の産業廃棄物投棄により、アシカの25%が進行性ガンを発症したという。

エネルギー開発や養殖等、沖合での開発が進む人類にとっても事態は重大な局面を迎えている。

 

ドイツ、キールに本社を置くNorth.io社は、技術によってこの問題を解決できると期待している企業のひとつである。EUが資金提供しているプロジェクトBASTAの一環として、AIツールを使って海底を探索し、発見した軍需品や化学化合物を分析しているのだ。

 

BASTAでは、超高解像度3Dサブボトムプロファイリング(SBP)と自律型水中ロボット(AUV)ベースの磁気マッピングによるデータ取得を目指している。
さらに、AIによるビッグデータの解析を実施することで、軍需品の検出と識別における新たなアプローチにつながるのだという。

まだ取り除く作業は始まっておらず、現在、技術者、科学者、政策立案者などが、安全で最善の戦略を議論している。
例えば、その場で弾薬をコンクリートで包むという対処もあるが、より恒久的な解決策としては、バイオレメディエーションによる破壊がある。それは、弾薬をカプセル化した上で金属や腐食剤を食べる微生物を注入し、無害な副産物に変えるという方法である。

「技術的な解決策は、政府やEUの支援を待っている」と、North.io社のCEOであるJann Wendt氏は述べている。

地球温暖化と同様に、海底に眠る軍需品の除去は私たちが生きている間に解決できるような問題ではないが、短期間で解決できないからこそ、今すぐに取り組んでいかなければならない。


Source :AI will finally remove toxic weapons from the bottom of the sea

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TEXT:
倉若太一 ( Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。企業・利益中心の開発はいかがなものかと疑問を持ち始めました。いつまでもあると思うな親・金・資源。

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